今回は、Pch-MOSFETによる、電源の逆接続などから後段の回路を保護する「逆接続保護回路」の紹介です。
逆接続保護機能は、ダイオード1個でも実現可能ですが、ダイオードによる電圧降下が発生します。
今回の回路は、電圧降下をできるだけ小さくしたいときなどに有効です。
Pch-MOSFETの使い方
回路の前に、Pch-MOSFETの使い方についてざっくりと解説します。
ゲートの電圧が、ソースの電圧よりも一定以上低いとき、FETは「ON」となり、そうでないときは「OFF」となります。
また、Pch-MOSFETのボディダイオードは、FETのドレイン側にダイオードのアノード、ソース側にカソードとなります。
Pch-MOSFETによる逆接続保護回路
この回路は、入力電圧が順方向のときにMOSFETがON、逆方向のときにはMOSFETがOFFとなることで、電源の逆接続から後段の回路を保護します。
この逆接続保護回路の動作を見ていきます。
まずMOSFETがOFFの状態で、入力電圧Vinが印加されたとき、電流がMOSFETのボディダイオードを通じて回路を流れます。
これによって、MOSFETのソースの電圧は(Vin-Vf)となります。また、ゲート電圧は0[V]です。
そのため、MOSFETのゲート-ソース電圧Vgsは、-(Vin-Vf)となります。この電圧が、MOSFETのゲートしきい値を上回っていれば、MOSFETはONとなり、負荷(Load)には入力電圧Vinがかかります。
入力電圧が逆方向となった場合には、
MOSFETのゲート-ドレイン間に電圧がかかりますが、ゲート-ソース間に電圧がかからないのでMOSFETはOFFのままです。そのため、後段の回路に逆方向の電圧が印加されません。
逆接続保護回路の注意点
逆流防止機能はない
この回路は、入力電圧が正のときはMOSFETがON、負のときはMOSFETがOFFとなる逆接続保護回路です。そのため、入力電圧が正のときに、負荷電圧の方が入力電圧よりも大きいときは、電流が逆流します。逆流防止ダイオードのかわりにはなりません。
ゲート-ソース間電圧
上記の回路は、入力電圧を直接ゲート-ソース間に印加します。入力電圧が、MOSFETのゲートーソース電圧のしきい値以下の場合はMOSFETがONとなりません。また、しきい値以上でも、充分にMOSFETをONとなるだけの電圧がないと、ON抵抗が大きくなってしまいます。
ゲート-ソース間の耐圧
入力電圧が大きい場合には、MOSFETのゲート-ソース間の耐圧にも注意が必要です。ゲート-ソース電圧の絶対最大定格は20Vくらいのものが多いです。入力電圧は、だいたい12Vくらいまでが使える範囲かな?と思います。
入力電圧がそれ以上になる場合には、ツェナーダイオードなどでゲート-ソース電圧をクランプする必要があります。
ドレインとソースを入れ替えたらどうなるか?
さて、この回路のMOSFETのドレインとソースを入れ替えた場合をちょっと考えてみます。
Pch-MOSFETのゲートを入力電圧Vinで直接ドライブするイメージで、一見これでも良さそうに見えます。
しかし、入力電圧を逆方向にすると
MOSFETのボディダイオードを通じて、回路に電流が流れ、後段の回路に逆電圧がかかってしまいます。
ということで、ドレインとソースを入れ替えると、逆接続保護になりません。
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