電流積算計をつくる(2)

2023/08/06

計測 自作

t f B! P L

前回からの続きです。

回路定数の決定

入力段アンプのゲイン(Rgの値の決定)

まず、入力段アンプのゲインを求めます。

積算計の仕様は「1mAh=1カウント」としたので、1A流れているときの(積算計の)出力周波数は

1A流れているときの積算計の出力周波数

となります。分周器で1/512倍すると仮定すると、(1A流れているときの)NJM4151の出力周波数は

1A流れているときのNJM4151の出力周波数

となります。NJM4151データシート第4図によると、-10V印加時に、NJM4151の出力周波数は10kHzとなるので、10kHz時の電流を考えると

最大電流値

これは、加速等を考慮すると、妥当な値だといえそうです。(-10V印加を、入力の最大値とする)

電流センサには、1mΩのシャント抵抗を採用する(仕様)ので入力段アンプのゲインは

計装アンプのゲイン

入力段のアンプ「INA128」のRgは

INA128のRg

と決定されます。

V-Fコンバータ回路

続いて、OP07とNJM4151によるV-Fコンバータ回路の定数決定を行います。

まず、NJM4151のワンショット時間決定用の抵抗RoとコンデンサCoは、データシート第4図の通り、6.8kΩと0.01μFとします。すると、ワンショット回路の作動時間、つまり積分コンデンサの放電時間は

積分コンデンサの放電時間

となります。また、NJM4151のコンパレータしきい値電圧決定用の分圧抵抗も、データシート第4図の通り5.1kΩと10kΩとしました。

定電流出力値設定用抵抗Rsは、RBを100kΩとしたとき

NJM4151のRsの値の決定

となります。

積分コンデンサには、ポリプロピレンコンデンサを使いました。もれ電流、容量の電圧依存性、誘電体吸収が少ないものが良いです。ワンショット回路作動時間設定用コンデンサCoも、同じくポリプロピレンコンデンサにしました。

また、積分回路では、ダイオードの漏れ電流も気にする必要があるので、J-FET「2SK246」をダイオードとして使用しています。J-FETのドレイン-ソースを短絡して、ゲート-ドレインソース間をダイオードとして使うと、漏れ電流がpAオーダーくらい?と非常に小さいらしいです。

分周回路

分周回路は、バイナリカウンタ「MC14020B」を用いて1/512倍に分周しています。MC14020Bは絶対最大定格が18Vなので、12Vで動作させています。出力信号は、分圧回路とボルテージフォロワによって5Vに変換しています。

全体回路

電流積算計回路図

実際に基板に組むと、こんな感じになりました。

積算計基板

回路の調整

製作した回路を調整していきます。

入力アンプの調整

オフセット除去

回路の入力端子IN-、IN+を0Vとしたときに、INA128の出力電圧[6ピン]が0Vとなるように、半固定抵抗VR2(5kΩ)で調整します。これによって、オフセット電圧を除去します。

ゲインの調整

回路の入力端子に10mVを印加して、INA128の出力電圧[6ピン]が-1422.2mVとなるように、半固定抵抗VR1(100Ω)を調整します。

調整したら、入力端子に70.31mVを印加して、INA128の出力電圧[6ピン]が-10Vとなることを確認します。

V-Fコンバータの調整

入力端子に1mVを印加したときに出力周波数が0.2777Hz、入力端子に70.31mVを印加したときには、出力周波数が19.53Hzとなるように、半固定抵抗VR3(5kΩ)と半固定抵抗VR4(5kΩ)で調整します。

分周回路の出力電圧の調整

周波数出力の電圧が5Vのパルスとなるように、半固定抵抗VR5(5kΩ)で調整します。

動作テスト

製作した積算計の動作テストをしました。項目は以下の3点です。

  • 0Hz出力テスト
  • 出力周波数特性テスト
  • 消費電力

0Hz出力テスト

積算計の入力端子を短絡して、出力端子にメモリハイコーダを接続して行いました。出力の矩形波の立ち上がりエッジをトリガと設定して、充分に時間がたっても、トリガにかからなければOKとしました。

積算計の0Hz出力テスト試験回路イメージ

試験の結果、30分間で一度もトリガにかかることは無く、0Hz出力といって実用上問題ないといえそうです。

出力周波数特性テスト

電流センサ出力に見立てた電源を用いて、入力電圧に応じた出力周波数を測定しました。周波数は、メモリハイコーダのABカーソル(時間軸)によって測定しました。

積算計の出力周波数試験

得られた入力電流-出力周波数特性はこんな感じです。

積算計のI-f特性

このグラフは、電源の出力電圧を、(1mΩのシャント抵抗を用いたものとして)入力電流値に換算して表しています。

このグラフより、入力電流値に対して出力周波数が、線形に変化しています。いい感じです。

消費電力の概算

デジタルマルチメータの電流レンジにて、積算計の電源電流を測定しました。積算計の入力信号は10mV(10A相当)として測定しました。

結果は、+12V電源の電流が約10.44mA、-12V電源の電流が約4.45mAでした。電源電圧がそれぞれ+12.0V、-12.0Vとすると、消費電力は125.3mW、53.4mWとなり、合計178.7mWとなりました。

ソーラーカーでは、積算計を最低2回路搭載することになるので、約360mWを積算計で消費することになります。360mWの消費電力を大きいと捉えるか、それとも小さいと捉えるかは意見の分かれるところかもしれませんが、個人的には「ちょっと大きい」と捉えています。

NJM4151をLM331に、OP07をOP97に置き換えたりすると、いくらか消費電力が下がると思います。

部品表

品名 型番 個数 入手先
抵抗 47Ω 2
抵抗 100Ω 8
抵抗 5.1kΩ 2
金属皮膜抵抗 150Ω 2
金属皮膜抵抗 10kΩ 2
金属皮膜抵抗 300Ω 1
金属皮膜抵抗 100kΩ 1
金属皮膜抵抗 5.1kΩ 1
金属皮膜抵抗 10kΩ 1
金属皮膜抵抗 6.8kΩ 1
金属皮膜抵抗 12kΩ 1
金属皮膜抵抗 2.7kΩ 2
半固定抵抗 100Ω 1
半固定抵抗 5kΩ 3
半固定抵抗 10kΩ 1
積層セラミックコンデンサ 1uF 8
積層セラミックコンデンサ 0.1uF 3
ポリプロピレンコンデンサ 5nF 1
ポリプロピレンコンデンサ 0.01uF 1
計装アンプ INA128 1
オペアンプ LM358 1 秋月電子
オペアンプ OP07 1 秋月電子
V-Fコンバータ NJM4151 1 秋月電子
バイナリカウンタ MC14020B 1
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