ソーラーカー搭載用の電流積算計の紹介です。伝統的?な手法を用い、V/Fコンバータによるアナログ回路構成の電流積算計を作ってみました。
電流積算計と積算電流値計測システムの概要
積算電流値計測システムは、バッテリ残量(SOC:State Of Charge)を推定するために、流れた電流の積算量の計測をします。
例えば、ソーラー発電電流とモータ消費電流を積算し、その差分を積算バッテリ電流とする、といった使い方をします。こうして得られた情報は、レースでのエネルギーマネージメントに活用します。
システムは、電流センサ、電流積算計、カウンタで構成されます。電流センサで得られた信号を積算計に入力すると、積算計はある一定の積算電流量ごとにパルス信号を出力します。そのパルス信号をカウントすることで、流れた積算電流量を計測しています。
今回、センサ出力を受けてパルスを出力する「電流積算計」を製作しました。
電流積算計の回路構成と方針
積算計が行う処理は主に次のふたつです。
- センサ出力値を積算
- ある値ごとにパルスを出力
マイコンなどを用いてプログラムで処理する方法もありますが、今回はV/Fコンバータを用いて電圧を周波数へと変換する という伝統的(?)手法を用いることにしました。
V/Fコンバータによる積算計は、こんな構成になります。
V/FコンバータICは、「NJM4151」を採用しました。「NJM4151」は、0V入力時に出力周波数を0Hzとすることができるので、選定しました。
NJM4151のデータシート第4図「高精度V-F変換回路」を元に設計します。積算回路を構成するオペアンプは、ローノイズ、超低オフセット電圧の「OP07」、入力段アンプには高精度計装アンプ「INA128」を採用しました。
電流積算計の仕様
製作する電流積算計の仕様はこんな感じにしました。
- 電流センサ:シャント抵抗1mΩ
- 出力:5V矩形波
- 出力周波数:0.278Hz/A(1カウント=1mAh)
- 電源電圧:±12V
電流積算計の動作原理
動作の理解と定数設定のため、積算計の原理を考えます。
V-Fコンバータ
V-Fコンバータ(NJM4151)は、
- 積分器
- コンパレータ
- ワンショット回路
- ON/OFF可能な定電流源
の4つの要素で構成されています。これらの要素で、上記のNJM4151のデータシート第4図「高精度V-F変換回路」を考えると、こんな感じになります。
この図を用いて、V-Fコンバータの動作を考えていきます。
回路の動作はこんな流れになります。
- -Vin端子に入力された負電圧は、オペアンプによる積分器で積分されます。そのため、徐々にNJM4151の7番ピンの電圧が上昇していきます。
- NJM4151の7番ピンの電圧が、6番ピンの電圧を超えると、内部コンパレータが反転し、ワンショット回路が作動します。それにより、定電流出力がONとなり、この電流によって、積分コンデンサの電荷が引き抜かれます
- 一定時間が経過すると、ワンショット回路がOFFとなり、定電流出力もOFFとなります。そのため、再び積分コンデンサの充電が開始されます。
ロジック出力は、普段はプルアップされているので"H"となっていますが、ワンショット回路が作動している間だけ"L"となります。
ワンショット回路の作動時間はRo,Coで設定され、固定の値になります。そのため、ロジック出力"L"の時間も固定値となります。
ロジック出力"H"の時間は積分コンデンサの充電期間なので、充電電流に比例します。充電電流は入力電圧に比例するので、入力電圧に比例してロジック出力"H"となる時間が増減します。
ロジック出力"L"となる時間は固定値なので、入力電圧に比例して周波数が変化 します。また、これらのことから、ロジック出力のDuty比は50%ではなく、OFF時間固定のPFM変調のような動作になります。
定数決定するために、上記の関係を数式化します。そこで、積分コンデンサの充放電に注目します。
積分コンデンサの電圧波形は、こんな感じになります。また、主な変数の定義も記します。
ここで、放電時間はワンショット回路の作動時間なので、データシートより、t2=1.1×Ro×Coです。
また、定電流出力icはRsに流れる電流をカレントミラーによってコピーした値となっています。NJM4151の2番ピンは、ワンショット回路が作動している間1.89Vに保たれているので、Rsに流れる電流=定電流出力icは
となります。また、充電電流i1は
です。なので、これらの式から
となります。ただし、Q1=Q2のとき、つまりic>i1のときという条件が付きます。
上式より、出力周波数はVinの1次関数であることや、Rsの値によってゲイン(傾き)が変化することなどが分かります。
分周器
続いて、分周回路について考えます。分周回路には、ロジックIC「MC14020B」を用いました。
MC14020BはD-FFを多段接続したバイナリカウンタ回路です。データシートより、内部ブロック図はこんなです。
データシートより、動作タイミングはこんな感じです。
2進数の「ある桁」だけに注目すると、その桁以下のビットが、マイコンのタイマ機能でいうところの「プリスケーラ」として働きます。
出力周波数は、通過したD-FFの数をQとすると、
となり、2の累乗で分周することができます。
(次回へつづく)
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