小容量電子負荷装置をつくる

2023/04/23

自作

t f B! P L

オンボード電源などのテスト用に、小容量の電子負荷が欲しかったので、作ってみました。

だいたい100mAくらいまでのもの、できるだけ家にあるパーツを使う。という感じで製作しました。

製作した電子負荷装置

製作した電子負荷装置はこんな感じです。タカチの箱に収めました。

小容量電子負荷装置の外観

回路図はこちら。

小容量電子負荷装置 回路図

仕様は、以下の通り。

  • 電源:DC9V(ACアダプタから入力)
  • 負荷電力容量:3W
  • 最大電流:117mA
  • 最大電圧:50Vくらい?(MOSFETの絶対最大定格:60V)

以降、値の決め方等を解説していきます。

製作する電子負荷の原理

MOSFETのゲート電圧(ゲート-ソース電圧Vgs)がしきい値電圧Vthを超えて、ドレイン電流が流れはじめるが、MOSFETが完全にONとはなりきらないような領域では、ゲート電圧によって、オン抵抗が変わります。

この領域を用いて、MOSFETを可変抵抗のように使います。負荷電力はMOSFETで食わせます。

MOSFET「2SK2232」のId-Vgs特性はこんな感じです。

2SK2232 Id-Vgs特性

MOSFETのId-Vgs特性は温度によっても変化するので、OPアンプによる定電流制御をかけることで、安定した負荷として使用できます。

(関連記事:MOSFETとは? 使い方の基本と動作イメージ

熱計算

MOSFETは手持ちの2SK2232を使うことにしました。その場合、どの程度の負荷が取れるかを概算します。

まずは、ヒートシンクなしの場合を検討します。

チャネル温度は絶対最大定格の85%まで許容するとして、周囲温度は(箱に収めるとして)50℃とすると

2SK2232熱計算

ヒートシンクなしの場合、1.24W程度が限度となりそうです。ちょっと少ないので、ヒートシンクを付けることにします。

とりあえず、ヒートシンクは16×16×25mmのものを使うとして、熱計算を行います。

2SK2232熱計算(ヒートシンクあり)

3W程度の負荷がとれることが分かったので、これで良しとすることにしました。

(関連記事:カンタンな熱計算のやり方(1)ヒートシンクなしで、どこまで使用できるか?
(関連記事:カンタンな熱計算のやり方(2)ヒートシンクをつけた時

電流検出抵抗と電流指令用の抵抗分圧

最大電流を100mA程度と想定したので、100mAでいい感じの大きさの電圧となりつつ、電流が1mA等の小さいときでもそれなりの電圧となるように抵抗値を決めます。

電流検出抵抗

といったところで、22Ωとしました。(後から思えば、もう少し電流検出抵抗の抵抗値は小さくても良かった)

100mAで2.2Vが電流検出値となるので、まずそれくらいの電圧を、電源電圧9Vから分圧で作り出します。その電圧を、さらにボリューム抵抗によって分圧することで、電流指令値とします。

電流指令値のつくりかた

ちょっと多めに出るくらいを狙って、手持ちの抵抗から10kΩと、10kΩと6.8kΩの並列による分圧回路としました。すると、9.0Vが入力されたとき、2.59Vが出力されます。

分圧回路の電圧

100kΩのボリューム抵抗で、この2.59Vを分圧して電流指令としてオペアンプに入力します。10kΩのボリューム抵抗は微調整用です。

オペアンプの(+)入力端子と、(-)入力端子は、オペアンプが安定に動作しているときは同じ電圧となるので(バーチャルショート)、電流検出抵抗の電圧降下の最大値も2.59Vになります。

電流検出抵抗の電圧降下が2.59Vとなる電流値は、2.59/22=0.1177A。この値が負荷電流の最大値です。また、そのときの電流検出抵抗の電力損失は、0.1177×2.59=0.30Wとなりました。使用した電流検出抵抗は3W品なので余裕です。

ちなみに、抵抗分圧回路とボリューム抵抗の間にあるボルテージフォロワは必要です。無いと、(後段のボリューム抵抗によって)分圧比が崩れるので、電流指令の電圧が狙った値になりません。

(関連記事:分圧回路とその使い方
(関連記事:オペアンプの動作イメージとバーチャルショート

電源ランプと電流制限抵抗

電源が入っているかの識別用に、電源ランプ(LED)をつけました。

あまり光過ぎて眩しいのはイヤなので、流す電流は5mA程度として、電流制限抵抗を計算すると、

LEDの電流制限抵抗の計算

となるので、手持ちの抵抗から、1kΩ+470Ωの1.47kΩとしました。この値で再計算すると、

となりました。

(関連記事:LEDに電流制限抵抗が必要なワケ
(関連記事:LEDの電流制限抵抗の値の決め方

部品表

型番 個数
MOSFET 2SK2232 1
オペアンプ LM358 1
金属皮膜抵抗 10kΩ 2
金属皮膜抵抗 6.8kΩ 1
セラミックコンデンサ 100pF 1
抵抗 270Ω 1
抵抗 4.7kΩ 1
不燃性酸化金属皮膜抵抗 22Ω 3W 1
セラミックコンデンサ 0.1uF 1
抵抗 470Ω 1
抵抗 1kΩ 1
LED (赤) 1
シリコンラバーシート TO-220H TO-220用 1
ヒートシンク 16×25×16mm 1
小型ボリューム 10kΩB 1
小型ボリューム 100kΩB 1
小型ボリューム用ツマミ(ノブ)20mm(つば付) ABS-15 1
小型ボリューム用ツマミ(ノブ) ABS-28 1
ターミナル 赤 MB-124-N-RED 1
ターミナル 黒 MB-124-N-BLACK 1
2.1mm標準DCジャック パネル取付用 MJ-10 1
タカチ プラスチックケース SW-85B 1
ユニバーサル基板 1
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