電動車では、「回生ブレーキ」というものが使われることがあります。回生ブレーキとは、いったいどういうものなのか?ざっくりと解説していきます。
回生ブレーキとは?
ひと言で表すと、「力行とは逆のエネルギー変換をする」ことによって、ブレーキをかけることです。
力行(りきこう)では、モータに電気エネルギーを投入して、回転させます。これは、モータが電気エネルギーを運動エネルギーに変換しています。
回生では、運動エネルギーを電気エネルギーに変換します。すると、電気に変換した分だけ運動エネルギーが減り、減速します。つまり、ブレーキがかかります。
モータは電気と機械を仲介する変換器
モータは、電気の世界と機械(回転)の世界の仲介をする変換器です。そして、電圧と回転速度、電流とトルクのあいだには、深いつながりがあります。
回路的に考えてみる
バッテリとDCモータがつながっている回路で、力行と回生を考えます。
バッテリから、モータに電流を流すと、モータは回転します。モータが回転すると、モータには回転数に応じた起電力が発生します。
力行の時は、バッテリ電圧VB>モータ起電力VMとなっています。また、バッテリから電流が流れだすので、バッテリは放電されます。
電流をモータ→バッテリの向きに流すと、回生ブレーキがかかります。
電流の向きが逆なので、トルクが逆になり、回転を止める方向にトルクがかかります(つまり、ブレーキ)。また、バッテリに電流が流れ込むので、バッテリは充電されます。
回生時には、バッテリ電圧VB<モータ起電力VMという状態になっています。
バッテリ電圧とモータ起電力との大小関係をうまく調整出来れば、力行と回生を操ることができます。
DCモータの場合は、双方向DC/DCなどを用いて実現します。
非常に丁寧に説明頂きありがとうございます。
返信削除現在回生のメカニズムが分からなく苦労しています。
モータ減速時に回転方向は変わらず、トルクを逆にして減速すると思います。その際にバッテリに電流が流れ込む理由が分かりません。
モータを惰性で減速させる場合は、逆起電力が回転数に応じて発生する為、バッテリ電圧(=0)<モータ起電力となり、バッテリに電流が流れ込むのは分かります。
返信削除一方で減速制御(電流反転)により減速する場合、どのような順序で回生するのかわかりません。
返信削除エラーの都合でコメントを分割いたしました。
宜しくお願い致します。
すいません、気づかず完全に放置してしまいました。
削除惰性で減速する際には、運動エネルギーを電気エネルギーに変換するのではなく(回生するのではなく→バッテリに電流は流れ込まない)、機械損失(摩擦とか)や空気抵抗やらで運動エネルギーを減少させます。(市販EVやHVのアクセルOFFは回生制動をかけてそうですが...)
さて、どうやってバッテリに電流を流し込むか?ですが、基本的にモータの誘起電圧を、バッテリ電圧以上になるように、変換器で昇圧しています。
3相モータの場合は、モータをドライブするインバータを、コンバータ(AC/DC変換)として動作させることによって、昇圧しています。DCモータの場合は、双方向DC/DCコンバータなどによって、昇圧します。(モータ誘起電圧を入力とした昇圧チョッパで、バッテリを充電しているイメージ)
<余談>
「基本的には昇圧」で実現しますが、回生制動に昇圧は必須ではありません。バッテリ(とか蓄電デバイスに)に電流が流れ込めばいいわけです。
エコノムーブ(超小型電気自動車のエコラン)では、モータ誘起電圧よりも低い電圧の、電気二重層キャパシタを接続して回生したりします。(電気二重層キャパシタをモータの誘起電圧まで充電する)
ソーラーカーでは、鈴鹿サーキットで坂を下っている際に、惰性で下っているつもりが、速度が上がりすぎて、モータの誘起電圧がバッテリ電圧を超えて、自然に回生し始めたり、なんてこともあります。