LTspiceには、LEDのSPICEモデルが元々いくつか入っています。しかし、「ちょうど良さそうなのがない」、「個別のモデルを入れようにも、入手できない」なんてことも多いです。
そんな時、それほど厳密でなくて良いので、できるだけ簡単に、使いたいLEDのモデルをサクッと作ってしまいたい!と思ったりします。
そこで、今回は「ダイオードの簡易モデルを使った、カンタンなLEDの記述」について、やっていきたいと思います。
ダイオードの簡易モデル
LTspiceのダイオードのモデルには、「半導体の物性に基づくモデル」と「折れ線近似による簡易モデル」の2種類があります。
「半導体の物性に基づくモデル」は、半導体物性の特性に基づくモデルなので、動作が正確です。しかし、複雑で分かりにくいのが難点で、モデルをつくるのは大変です。
一方、「折れ線近似による簡易モデル」は、「どの電圧から導通状態となるか」「導通状態での抵抗値」などといった、ダイオードの動きからモデル化します。
そのため、「折れ線近似による簡易モデル」は使う側の人間からすると、とても分かりやすく、モデルをつくるのが簡単です。
しかし、単純なモデルなので、正確性に欠きます。とはいえ、案外これで十分なことも多いのでないかと思います。また、単純なモデルなので、シミュレーションを高速に実行できます。
ちなみに、LTspiceでは(他のSPICEでも?)、簡易モデルを示すパラメータ(Ronなど)を記述すると、自動で「簡易モデル」として処理されます。
簡易モデルのパラメータの決め方
LEDの簡易モデルをつくるのに必要なパラメータは、主に下記3つです。
- Vfwd :ダイオードが導通状態になる電圧
- Ron :導通状態での抵抗値
- Epsilon: 2次曲線でなめらかにつなぐ範囲
これらのパラメータは、LEDのI-Vカーブから求めます。
ダイオードが導通状態になり始める電圧をVfwd、そこから曲線で表す範囲をEpsilon、だいたい直線とみなせる領域での傾きをRonとします。
実際のLED「OS5OAA5111A」の簡易モデルをつくる
今回は、「OS5OAA5111A」というオレンジ色LEDの簡易モデルを作ってみます。
データシートに、I-Vカーブが載っていたので、ここからパラメータを算出していきます。
導通し始める電圧は1.8V程度と読み取れるので、Vfwd=1.8。
ほぼ直線状となった領域でのΔVとΔIより、導通状態での抵抗値は
導通開始電圧1.8Vから2.4Vまでを、なめらかな曲線で表すことにすると、Epsilon=2.4-1.8=0.6となります。
まとめると、このようになります。
- Vfwd:1.8
- Ron:3.636
- Epsilon:0.6
LTspiceで「OS5OAA5111A」の簡易モデルのシミュレーションをする
それでは実際に、LTspiceでシミュレーションしてみます。
上図のように回路図をかき、SPICE Directive(ツールバーの「.op」のアイコン)に、
.model OS5OAA5111A D(Vfwd=1.8 Ron=3.636 Epsilon=0.6)
と記述します。
シミュレーションを実行すると、このようなグラフが得られました。
形はそれっぽいグラフになっています。しかし、データシートのグラフと比べると、若干電流の立ち上がりが早い(増え方が大きい)です。
とはいえ、データシートの表をみると、電流が20mAのときのVfは2.1V(typ)となっていて、シミュレーション結果でも同様に電流20mAの時の電圧は2.1Vとなっています。
こだわって、もう少しパラメータを精査するのもアリですが、通常使用する領域はこのあたりなので、「だいたい合っている」とみなして良いかな?と思います。
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