テスタ(デジタルマルチメータ)には、「真のRMS」というものがあります。
「真の」とはどういうことなのか?「真ではないRMS」があるのか?
今回は、「真のRMS」と「真のRMSではないもの」の違いについてやっていきたいと思います。
真のRMSとは?
「真のRMS」とは、言葉のとおり、本当に実効値(RMS)を測定しているということを示しています。
なんじゃそれ?といった説明ですが、そうなんです。そこで、「真のRMSではないもの」を考えると、「真のRMS」の何がうれしいのかが分かります。
「真のRMSではないもの」は、ACレンジで交流の値を表示するときに、(絶対値の)平均値を測定して、換算することでRMSとして表示しています。直接RMS値を測定(演算)するのではなく、平均値を測定するのは、そのほうが回路的に楽だからです。
- 真のRMS:本当にRMSを測る
- 真のRMSでないもの:絶対値の平均値を測って換算する
真のRMSはなぜ必要?
真のRMSがなぜ必要か?真のRMSでないものは何が問題か?を考えていきます。
正弦波のとき
正弦波の実効値と(絶対値の)平均値は、
なので、
と計算すれば、平均値を実効値に換算できます。これが「真のRMSではないもの」がやっていることです。
矩形波のとき
次に、矩形波のときを考えてみます。
正弦波の時と同じ計算をすると(テスタにはどんな波形が入力されているのが分からないので、係数は正弦波と同じとしている)
となってしまいます。波形によって係数を自動で変えられれば、変な値にならなくて済むのですが、それはだいぶ難しそうです。(それならRMSを測定・演算?したほうがラクかと思われます)
各波形の実効値と平均値
各波形の実効値と絶対値の平均値を表にまとめると、こんなかんじです。
実効値と平均値との比は、波形によって違います。といったことから、正弦波用の換算値では、平均値を測って実効値に換算できるのは正弦波だけということが推察されます。
これが、「真のRMS」が必要になる理由です。
- 真のRMS:どんな波形でも正しい値がでる
- 真のRMSでないもの:正弦波のときだけ正しい値が出る(ACレンジは正弦波専用!)
実験してみた
手持ちのテスタに「真のRMS」のもの《sanwa PC5000》と、「そうでない」もの《sanwa PC500》があったので、実験してみました。
ファンクション・ジェネレータで波形を出力し、それぞれのテスタ(ACレンジ)で値をみて比較してみます。
振幅は1V(2Vp-p)、周波数は100Hzで実験しました。
実験結果はこちらです。
理論値のなかの「平均値から換算」は、絶対値の平均値(理論値)×π/(2√2)です。
正弦波以外を入力すると、真のRMSとそうでないものとでは表示値が違ってくるのが分かります。また、真のRMS(PC5000)の表示値はほぼ実効値の理論値を示し、そうでないもの(PC500)の表示値はほぼ平均値の理論値×π/(2√2)を示しています。(当たり前ですが...)
DCオフセットがあるとき
DCオフセットを1V付けた場合も実験してみました。1Vオフセットされるため、各交流波形の中心が1V、最高点が2V、最低点が0Vとなります。
DC成分があるため、テスタはDCレンジで測定しました(ACレンジはDCカットされるので)。PC5000は、「DC+ACレンジ」があるので、そちらで測定しました。
DCオフセットがあるときの実効値(の理論値)は、こんな感じで計算します。
実験結果はこんなです。
PC500の値は、どの波形でもほぼ同じ値となっています。おそらく平均化処理されて、AC成分が計測できていません。
PC5000の値は、だいたい合ってるかな?という値になってます。
DCオフセットが1Vではなく、1.055Vだったとして理論値を再計算すると、
こんな感じで、ほぼ理論値どおりの値が計測されていることが分かります。
真のRMSのテスタだと、DC+ACレンジがあったりします。その場合はDCにACが重畳しているような波形でも、正しい実効値を測ることができます!
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