OPアンプのパラメータに「スルーレート」というものがあります。これはいったい何を示しているのか?何に効いてくるのか?について、今回はやっていきます。
OPアンプのスルーレートとは?
OPアンプのスルーレート(SR)とは、OPアンプの"すばやさ" のことです。出力を変化させる能力(スピード)のこと、といったほうが分かりやすいかもしれません。
この値が大きいほど、OPアンプは出力を高速に変化させることができます。高速で振幅の大きい信号の時に、特に重要なパラメータです。
ステップ状に入力電圧を変化させた時のOPアンプの出力波形を考えてみます。
入力がt=0で高速に変化したので、それに応じて、OPアンプが頑張って出力を変化させている、という状況です。このとき、OPアンプは最大の速度で出力を変化させているので、この傾きがスルーレートになります。
よく使われる単位は[V/μs]です。1μsあたりに出力電圧をどれだけ変化させることができるかを意味します。そのため、値が大きいほど"すばやい"OPアンプです。
SR=5V/μsであった場合は、1μsあたり5V出力を変化させることができます。このとき、15V出力を変化させるには、3μsかかります。
正弦波とスルーレートの関係
スルーレートと、出力波形の関係を考えてみます。スルーレートによる制限にかからず、対応可能な波形かどうかは、出力したい波形の傾きの最大値によります。
OPアンプのスルーレート ≧ 波形の傾きの最大値
であればOK(少なくとも、スルーレートに制限されて波形が歪むことはない)です。
正弦波の傾きの最大値を考えると、
といったかんじに、絵的に正弦波の傾きが最大なのはθ=0のときで、「傾き」なので微分すれば値を求めることができます。そして、その値はVp(横軸はθ)と求まります。
電気の世界の波形として考えやすくするために、θ(角度)をt(時間)に変換すると、
と計算され、正弦波の傾きの最大値は2πfVpです。OPアンプで正弦波を出力するとき、この値以上のスルーレートが必要になります。
例:f=10kHz、Vp=5Vの正弦波を出力するのに必要なSR
傾きの最大値は、
k = 2πfVp = 2×π×10000×5 = 314159[V/s] = 0.314[V/μs]なので、
必要なスルーレートは、SR ≧ 0.314[V/μs]と求まります。
三角波とスルーレートの関係
三角波の場合も考えてみます。
三角波は直線的に上昇、下降するので、その傾きが必要なスルーレートとなります。
上昇と下降の傾きが同じ三角波で考えると、
といった具合に、傾きは4fVpと求まります。
例:f=10kHz、Vp=5Vの三角波を出力するのに必要なSR
三角波の傾き(の最大値)は、
k = 4fVp = 4×10000×5 = 200000[V/s] = 0.2[V/μs]なので、
必要なスルーレートは、SR ≧ 0.2[V/μs]と求まります。
同じ周波数、同じ振幅の正弦波の時と比較すると、必要なSRが小さくて済むことが分かります。
まとめ
- OPアンプのスルーレートとは、出力を変化させる能力で、"すばやさ"のこと。
- OPアンプのスルーレートは、出力できる最大の傾きともいえる。
- sin波の傾きの最大値は、2πfVp。sin波を歪みなく出力するには、これ以上のSRが必要。
- 三角波(上昇・下降の傾きが同じもの)の傾きの最大値は、4fVp。
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