相補PWMと同期整流

2022/03/13

パワエレ

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DC/DCコンバータやモータコントローラなどで出てくる「相補PWM」と「同期整流」という用語。同じことを言っているような、違うような?

結論から言うと、このふたつはチョッパでは"ほぼ"同義です。(相補PWMで同期整流する)

今回は、相補PWMと同期整流についてやっていきたいと思います。

相補PWM

相補PWMとは?

相補PWMとは、「相補」な関係のPWM波形のことです。うん、何言ってるのか分かりませんね。「相補」って、日常生活では(おそらくあまり)使わない言葉だと思います。

図でみるのが早いので、図にすると

相補なPWM

こんな感じです。あるPWM波形「A」と、その反対の波形「B」は、「相補な波形」です。この正相・逆相のPWMのペアを「相補PWM」と呼びます。

「相補」というと、なんだかよく分からない感じですが、要は反転した波形ということです。

ちなみに、「相補」は英語で「Complementary:コンプリメンタリ」です。和訳文書などで"コンプリメンタリなPWM出力"とか書かれることがあります。

どう使うのか?

さて、この相補なPWMのペアですが、どう使われるのでしょうか。

パワエレでHigh SideのスイッチとLow Sideのスイッチに相補PWMをかける、というのがよく用いられる使われ方です。

相補PWMの用途

このとき、High SideとLow Sideのスイッチが同時にONとなる危険があります。

相補PWMには同時ONの可能性あり

High SideとLow Sideのスイッチが同時にONとなると、貫通電流が流れます。

同時ONのよる貫通電流

この貫通電流を防ぐために、「デッドタイム」を相補PWM波形に付加します。(High SideとLow Sideが確実にOFFとなる時間を設ける)

デッドタイム付き相補PWM

デッドタイムは「オンディレイ」でつくるのが慣習です(だと思う)。

On Time Delay

「オンディレイ」は波形の立ち上がりエッジを遅らせる方法のことです。立ち下りエッジはそのままです。

同期整流

同期整流とは?

同期整流とは、ダイオードをMOSFETで置き換えることです。

ダイオードをMOSFETで置き換える

"同期整流"という名称

"同期整流"という名称ですが、なんだか分かりにくいと思いませんか?"同期"(←何に?)"整流"(←整流なのか?)

おそらく、同期整流という名前は

MOSFETにかかる電圧(または、流れる電流)に同期してMOSFETをON/OFFして、あたかもダイオードのように整流する

ことから名付けられたのかな?と思ってます。ただし、個人的に、勝手にそう思ってるだけなので、ひょっとすると全くの的外れかもしれません。

なぜダイオードをMOSFETで置き換えるのか

さて、同期整流では、なぜわざわざダイオードをMOSFETに置き換えるのでしょうか。ダイオードのままにしておけば、自動でON/OFFされるのに、MOSFETに置き換えるとON/OFFを制御する必要がでてきて、回路が複雑化してしまいます。

にもかかわらず、ダイオードをMOSFETに置き換える主な理由は、損失低減です。

ダイオードとMOSFETの損失比較

ダイオードによる損失は、順方向電圧VF×流れる電流Iで求まります。VF=0.5(SBDを想定)、I=3とした場合、損失は1.5Wとなります。MOSFETによる損失は、流れる電流Iの2乗×ON抵抗Ronで求まります。ON抵抗は、MOSFETをON状態にしたときに残る抵抗値のことです。I=3、Ron=0.01とした場合、損失は0.09Wです。

この場合、ダイオードをMOSFETに置き換えることで、損失を1.5W→0.09Wと大幅に低減することができます。

相補PWMと同期整流

ここまでで「相補PWM」と「同期整流」とはどのようなものか、みてきました。あまり接点を感じない、別の話のように思えたかもしれません。しかし、このふたつは、チョッパ回路(など)で密接につながります。

降圧チョッパを例に考えていきます。

降圧チョッパの回路と、スイッチの状態と電流の流れる経路を図にすると

降圧チョッパの電流経路

となります。降圧チョッパのダイオードをMOSFETに置き換えます。

ダイオードをMOSFETで置き換える

同期整流の降圧チョッパのスイッチ状態と電流経路は

同期整流方式降圧チョッパの電流経路

となります。同期整流方式の降圧チョッパの電流経路は、ダイオードを用いた降圧チョッパの電流経路と同じです。

このとき、High SideのMOSFETとLow SideのMOSFETは交互にONとなります。ということは、同期整流動作を実現するには双方のMOSFETを相補PWMで駆動すればよいということです。

そのため、チョッパ回路では、「相補PWMで駆動する」というのは、「同期整流する」と言っているのとほぼ同義です。

余談

チョッパ回路で相補PWMによる同期整流をすると、ダイオードのときとは違って、電流を逆流させることができます。そのため、小電流のときでも電流連続モードで動作させることができます。ただし、電流によるジュール損がでるので、小電流の領域では、ダイオードによるチョッパよりも損失が大きくなる場合もあるので注意が必要です。

また、同期整流のチョッパ回路は、降圧チョッパと昇圧チョッパが同じ回路になります。電流も双方向に流すことができるので、降圧チョッパと昇圧チョッパの区別はなくなります。

(関連記事:昇圧チョッパと降圧チョッパは同じもの!?

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