DC/DCコンバータやモータコントローラなどの電力変換器では、MOSFETが重要な部品です。
個人が扱うあたりの電圧では、MOSFETが主力のスイッチング素子になると思います。
今回は、MOSFETについて、電子デバイスとしての構造や原理はすっ飛ばして、使用するにあたっての使い方・動作イメージについてやっていきたいと思います。
MOSFETの動作イメージの解説の前に
MOSFETは、ゲート(G)、ドレイン(D)、ソース(S)の3つの端子をもつ素子です。
見た目は、よくある3本足のパッケージだとこんな感じです。(最近はいろいろな形(パッケージ)があります。)
型番が印字されている面からみて、左からゲート、ドレイン、ソースの端子です。しかし、必ずそうなっているとは限らないので、データシートを確認しましょう。
データシートは、型番を検索すれば大抵pdfで出てきます。こんな感じのやつです。データシートは、欲しい情報がたくさん載っている超重要な文書です。
MOSFETには大きく分けて、nチャネル型とpチャネル型の2種類があります。それぞれの回路記号はこんなです。
pチャネル型と比べて、nチャネル型の方が出番が多い(?)、かつ、分かりやすいと思うので、以降はnチャネルのMOSFETで解説を進めていきます。
MOSFETはスイッチ
MOSFETをどう使うか、MOSFETをどう認識するか。その基本は電子スイッチだと思います。
MOSFETをスイッチとして扱うとき、こんなイメージでMOSFETをとらえています。
このスイッチの開閉を、ゲート・ソース間の電圧で行います。
ゲート・ソース間電圧Vgs=0のとき、ドレイン・ソース間の抵抗値は非常に大きくなります。この状態はスイッチOFFとみなせます。ゲート・ソース間電圧Vgsが十分に大きいと、ドレイン・ソース間の抵抗値が非常に小さくなります。この状態がスイッチONです。
このように、MOSFETはゲート・ソース間の電圧によってON/OFFが操作できる電子スイッチととらえることができます。
MOSFETが"ON"となるゲート・ソース電圧Vgsは、素子によって違うので、データシートをよく確認しましょう。10Vくらいで充分"ON"になるものもあれば、5Vくらいで充分"ON"になるものもあります。
スイッチがON状態の時にドレイン・ソース間に残る抵抗値のことをON抵抗といいます。もちろん、小さい方がうれしいパラメータです。
注意点1
ゲート電圧はあくまで「ゲート・ソース間の電圧」なので注意が必要です。ハーフブリッジのHigh SideのMOSFETは、GNDからみると、(中間電圧Vm+ゲート・ソース間電圧Vgs)の電圧をゲートに加える必要があります。
注意点2
ソース→ドレイン方向へはダイオードがあるため、電流を遮断することができません。Vgs=0の時でも、ソース→ドレイン方向はダイオードを通じて電流が流れます。
MOSFETは可変抵抗
前節では、MOSFETをスイッチとみなしましたが、MOSFETは可変抵抗とみなすこともできます。
スイッチとして使うときには、MOSFETが充分にONとなる電圧をゲート・ソース間にかけます。それに満たない電圧をゲート・ソース間にかけた場合には、ドレイン・ソース間は充分にON状態とならず、それなりに抵抗値が残ります。この抵抗値はゲート・ソース間にかけた電圧によって変化するので、MOSFETはゲート・ソース間電圧によって抵抗値が変わる可変抵抗ともいえます。
ゲート・ソース電圧が小さいほど抵抗値は大きく、ゲート・ソース電圧が大きいほど抵抗値は小さくなります。
この特性を用いて、MOSFETを電子負荷として利用したりします。
ゲート・ソース間はコンデンサのイメージ
MOSFETのドレイン・ソース間はスイッチ、または可変抵抗のイメージでしたが、ゲート・ソース間はコンデンサのイメージです。
ゲート・ソース間に電圧をかけると、この"コンデンサ"が充電されます。それによってゲート・ソース間電圧Vgs(=コンデンサ電圧)が上昇します。ゲート・ソース間の電圧が上昇するにつれて、ドレイン・ソース間がONとなって(抵抗値が下がって)いきます。
このコンデンサの容量は小さいので、高速に充放電が可能です。なので、MOSFETは高速にスイッチングができます。(すばやくONにできるし、すばやくOFFにできる)
また、"コンデンサ"なので、充電してから回路を切り離しても、電荷は貯まったままです。つまり、ゲート・ソース間電圧Vgsは維持され、MOSFETはON状態のままとなるので注意が必要です。
まとめ
- MOSFETはゲート・ソース間電圧でON/OFFを制御できる「スイッチ」
- MOSFETはゲート・ソース間電圧で抵抗値が変わる「可変抵抗」ともいえる
- MOSFETのゲート・ソース間はコンデンサのようなもの
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