非絶縁のDC/DCコンバータの方式に、昇圧チョッパと降圧チョッパがあります。
低い電圧から高い電圧を作り出すのが「昇圧チョッパ」、高い電圧から低い電圧を作り出すのが「降圧チョッパ」です。
それぞれ別に説明されることが多いと思います。しかし、このふたつは実は同じものだったりします。
今回は、「昇圧チョッパと降圧チョッパは同じもの!?」というテーマでやっていきます。
降圧チョッパ
降圧チョッパはよくこんな回路の形で紹介されます。
そして、入出力電圧の関係は
です。
さて、降圧チョッパの回路を少し変形します。
見た目を変えているだけで、つなぎは変わっていません。
ここで、回路中のダイオードをスイッチに置き換えます。
いきなりなぜ?と思われるかもしれませんが、パワエレではダイオードはスイッチとみなせるものだからです。ダイオードを「順方向に電圧をかけると自動でONとなり、逆方向に電圧をかけると自動でOFFになる。(使用者の任意のタイミングでのON/OFFはできない)」というスイッチとみなします。
本当にMOSFETなどでダイオードを置き換える「同期整流」というものもあるので、ダイオードであったことは忘れて(任意のタイミングでのON/OFFも可能として)スイッチとして扱かっていきます。
ここまで変形したところで、昇圧チョッパも見てみましょう。
昇圧チョッパ
よく出てくる昇圧チョッパの回路はこんなかたちです。
昇圧チョッパの入出力電圧の関係は
です。
降圧チョッパの時と同様に、変形していきます
ダイオードをスイッチに置き換えると、こうなります。
降圧チョッパと昇圧チョッパを比べてみる
さて、変形した降圧チョッパと昇圧チョッパを比べてみます。
降圧チョッパと昇圧チョッパは、入出力の向きが反対なだけで、同じ回路なのが分かると思います。
高い電圧側→低い電圧側に電流を流すと「降圧チョッパ」、低い電圧側→高い電圧側に電流を流すと「昇圧チョッパ」となります。
降圧チョッパと昇圧チョッパの入出力電圧の式
降圧チョッパの式は
昇圧チョッパの式は
と、二つの式は違って見えます。しかし、この二つの式も同じものです。
降圧チョッパと昇圧チョッパは同じ回路なので、記号の名づけを変えてみます。
- 高い側の電圧:VH
- 低い側の電圧:VL
- 高い側のスイッチのON時間比率:dH
- 低い側のスイッチのON時間比率:dL
このように記号の名前を変更すると、降圧チョッパの式はこうなります。
昇圧チョッパの式はこうなります。
チョッパ回路のハイサイド側(電圧高い側)スイッチとローサイド側(電圧の低い側)スイッチは"相補的"に動作します。もっと簡単にいうと、反対の動きをします。
なので、ハイサイド側のdutyとローサイド側のdutyと、その関係は
となり、昇圧チョッパの式に代入すると
となり、降圧チョッパと同じ式になりました。
ということで、回路も式も、昇圧チョッパと降圧チョッパは同じものになります。なので、両者をあまり区別して考える必要はないと思います。(昇圧チョッパの式って忘れやすくないですか?でも、降圧チョッパの式だけ覚えていればそれで充分です。)
補足
同期整流ではない(ダイオードを用いた)チョッパでは、昇圧チョッパと降圧チョッパは流せる電流の向きが違います。また、一方向にしか電流を流すことができないので、昇圧チョッパは昇圧方向にしか使えません。降圧チョッパも同様に降圧方向にしか使えません。これは、ダイオードが任意のタイミングでON/OFFできないことが原因です。
また、ダイオードを用いたチョッパは一方向にしか電流を流すことができないので、電流が不連続となる「電流不連続モード」があります。電流不連続モードでは、入出力電圧の関係式が変わるので注意です。
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