データシートに熱抵抗の記載がないときに、他のパラメータから算出する方法

2022/01/09

熱計算

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今回は、熱計算をしようとしてデータシートを見てみたら、熱抵抗の記載がない!というときに、他のパラメータから算出する方法についてやっていきます。

(計算フォームはこちら → 熱計算用、あると便利な計算フォーム(熱抵抗算出など)

熱抵抗と熱回路

熱抵抗の算出

熱抵抗は両端の温度差と流れる熱が分かれば、計算で出すことができます。

つまり、ジャンクション-ケース間熱抵抗を求めるには、ジャンクション温度Tj、ケース温度Tc、熱Pの値が分かればよく、ジャンクションー外気間熱抵抗を知るには、ジャンクション温度Tj、外気温度Ta、熱Pが必要です。

NJM7805FAで実際に計算してみる

秋月で取り扱っている三端子レギュレータ「NJM7805FA」のデータシートをみると、熱抵抗の記載がありません。そこで、データシートの他の情報から熱抵抗を求めてみます。

NJM7805FA絶対最大定格

NJM7805FAの絶対最大定格の表をみると、Tc≦70℃で最大許容電力が16W、ジャンクジョン温度の最大値が150℃であることが読み取れます。ここで、Tc=70℃で熱が16W、その時にジャンクション温度が150℃になるとすると

ジャンクション-ケース間熱抵抗算出
ジャンクションーケース間熱抵抗の計算

と、θj-cを求めることができました。

続いて、ジャンクション-外気間熱抵抗を求めるために、データシートの他のデータを探すと、このような「外気Taー許容損失Pd」のグラフがありました。

Ta-Pd特性図

このグラフより、ヒートシンクなしの場合にざっくりTa=85℃でPd=1Wくらいと読み取れます。グラフが、周囲温度が上がるにつれて許容損失が低下するのはジャンクション温度が最大値(150℃)に達するためと考えると、グラフが右肩下がりにある所ではTj=150℃であると考えられるため、Tj=150℃、Ta=85℃、Pd=1Wの値でθj-aを求めると

ジャンクションー外気間熱抵抗算出
ジャンクションー外気間熱抵抗の計算

と計算できました。

(参考)熱抵抗の記載があるもので計算して比べてみた

熱抵抗の記載がある三端子レギュレータ「NJM78M05FA」で、同様に計算をしてみました。

NJM78M05FA絶対最大定格

絶対最大定格の表から、Tjの最大値は150℃、Pd=7.5W(Tc≦85℃)と分かるので、

θj-c算出

と計算できました。

NJM78M05FAの熱抵抗

上の表より、データシートに記載されているNJM78M05FAのθjcは7[℃/W]です。

おや?計算結果と一致しないぞ!?

一致しない理由は、消費電力の最大値がジャンクション温度制限だけで決まっていない可能性などが考えられます。大外れした値ではなく、それなりにありそうな値になっていることから、参考値くらいにはなる?(かな?)(条件が不等号で記載されていたあたりの処理があやしい??)

「ほら、キレイに算出できるでしょ?」と言いたいところだったのですが、データシートの書き方によっては上手くいかない場合もある。ということでそのまま載せてみました。

(参考)熱抵抗の記載があるもので計算して比べてみた(その2)

熱抵抗の記載がある三端子レギュレータ「TA4805S」でも、同様に計算をしてみました。

TA4805S絶対最大定格の表

絶対最大定格の表から、Tjの最大値は150℃、Pd=2W(Ta=25℃)、Pd=20W(Tc=25℃)であるので、

TA4805Sの熱抵抗を算出

と計算できます。この値は、データシートに記載されている値とピタリ一致します。

まとめ

  • ジャンクション温度Tj、熱P、外気温度Tcがあれば、θ(j-c)を算出できる
  • ジャンクション温度Tj、熱P、ケース温度Taがあれば、θ(j-a)を算出できる
  • 許容損失の条件が不等号で記載されていたりすると(大ハズレはしてないものの)値が合わないことがある
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