前回は、ヒートシンクなしの場合の熱計算をやりました。今回は、ヒートシンクを取り付けた場合について、考えていきます。
(計算フォームはこちら → 熱計算(ヒートシンクなし・あり))
ヒートシンクを取り付けた場合の熱計算
ヒートシンクをつけた場合の概念図と熱回路はこのようになります。
半導体素子の接合部からケースまでの熱抵抗がRth(j-c)、ケースからヒートシンクまで(グリスや放熱シートなど)の熱抵抗がRth(c-h)、ヒートシンクから外気までの熱抵抗がRth(h-a)です。これらが全て直列に接続された形になります。
[例]NJM78M05FAで実際に計算してみる
前回の例で使用した「NJM78M05FA」に、ヒートシンクを取り付けたときの許容損失を計算してみます。想定回路は前回同様です。
step1:ジャンクション温度を決める
ジャンクション温度は前回同様に、150℃×0.8=120℃とします。
step2:外気温度を決める
外気温度も、前回と同じく50℃とします。
step3:熱抵抗を調べる
3-1:Rth(j-c)を調べる
NJM78M05FAのデータシートから調べます。
ヒートシンクを用いて使用するときの熱抵抗は「接合部-ケース間熱抵抗」で計算するため、7[℃/W]の値を採用します。
3-2:Rth(c-h)を調べる
今回は、三端子レギュレータとヒートシンクとの間には放熱シート「CW-3」を使うと想定します。CW-3は秋月で入手可能(\20)です。
秋月の販売サイトを見ると、熱抵抗が0.36[℃/W]と小さい。と思いきや、よくよく調べてみると、そうでもないような...?
データシートを見ると、熱抵抗:0.39[℃/W](←0.36じゃない!)は"代表特性"となっていて、どの値なのかいまいちよく分からず...(秋月販売サイト上ではTO-220サイズもTO-3PFも0.36[℃/W]と書いてある)。ここでは、そのデータシートに載っていたサーコンTRの熱伝導率から算出した熱抵抗値1.65[℃/W]を使うことにします。
熱伝導率と熱抵抗のお話は後日する予定です。
三端子レギュレータとヒートシンクの間に何も挟まなければ「何もない」のだから、Rth(c-h)=0となって、そっちのほうが良いのでは?と思いがちですが、 接触面のデコボコによって実効接触面積が小さくなり(そのスキマには空気という断熱材が入る)ため、熱抵抗がゼロどころか大きくなってしまいます。
3-3:Rth(h-a)を調べる
ヒートシンクには、16×25×16mmサイズのグローバル電子「16PB017-01025」を使うとします。データシートより熱抵抗を調べると、
熱抵抗は20.0[℃/W]と分かります。(グラフを見ると、熱が小さい時にはもう少し熱抵抗が大きいが、とりあえず概算なのでこの値を使うとする)
使いたいヒートシンクに、熱抵抗の記載がなかった場合は、似た大きさで熱抵抗が記載されているものを探して、その値を使うか、こちら(https://as76.net/emv/hounetu.php)のサイトにあるようなグラフから値を出します。
step4:許容損失を計算する
必要な値をそろえたので、許容損失を求めていきます。
熱回路のオームの法則より
よって、ジャンクション温度120℃、外気50℃とした場合の許容損失はおよそ2.44Wと求まりました。
これよりも大きな損失が見込まれる場合には、よりRth(c-h)の小さい放熱シート(またはグリス)を使用するか、ヒートシンクを大きくしてRth(h-a)を下げる必要があります。
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