三端子レギュレータやMOS-FETなどを使うときに、「ヒートシンクなしの予定だけど、本当にヒートシンクなしで大丈夫かな?」と思う事、ありませんか?
今回は、「ヒートシンクなしでいけるのか、いけないのか」をカンタンに計算する方法について、やっていきます。
(計算フォームはこちら → 熱計算(ヒートシンクなし・あり))
熱計算の基本
三端子レギュレータやMOS-FETなどの半導体部品の熱計算は、「熱抵抗」を用いて、電気回路と同じように計算することができます。
「熱の世界」では、温度の高い所から温度の低い所へと熱が流れ、その流れにくさを熱抵抗と呼びます。
これは、「電気の世界」で、電圧の高い所から電圧の低い所へと電流が流れ、その流れにくさを抵抗と呼ぶのとよく似ています。
「よく似ている」どころか、同じようにオームの法則で計算できてしまうので、とても助かります。
熱抵抗はRthの他にθと書かれることも多いです。
(例)NJM78M05FAで計算してみる
三端子レギュレータを用いた5V出力電源回路で、実際に計算してみましょう。
今回考える回路はこちらです。
ここでは入力電圧を12Vとしました。
三端子レギュレータ「NJM78M05FA」は、出力電圧5V、秋月電子で1個40円(2021年12月現在)です。また、最大出力電流は500mA、許容損失は7.5Wとなっていますが、これはヒートシンクを用いた時の値です。
それでは、NJM78M05FAをヒートシンクなしで使用した場合に、どの程度の損失までOKなのかを計算していきます。
三端子レギュレータをヒートシンクなしで使用する場合の熱回路はこのようになります。(シンプルですね!)
step1:ジャンクション温度を決める
まずは、ジャンクション温度からいきます。
今回の計算は「ヒートシンクなしでどこまで使えるか」を調べるのが目的のため、ジャンクション温度は、設計上の最大値にします。
NJM78M05FAのデータシートの「絶対最大定格」の項に、接合部温度の最大値が記載されています。この値は、絶対に超えてはならない値なので、余裕をもって設計することが必須です。
データシートより、絶対最大定格値は150℃です。今回は、余裕を見てその80%の値である120℃を設計上の最大値とします。
step2:外気温度を決める
次は外気温度の設定です。これは、想定される最大値を設定します。
今回は、箱に収めることを想定して、箱内温度上昇も見込んで50℃としました。
step3:熱抵抗を調べる
NJM78M05FAの熱抵抗をデータシートから調べます。
今回使用するNJM78M05FAはTO-220Fという外形なので、そちらの値を使用します。また、ヒートシンクなしで使用するときの熱抵抗は「接合部-外気間熱抵抗」で計算するため、60[℃/W]の値を採用します。
「接合部-外気間熱抵抗」ですが、このデータシートでは「接合部-雰囲気間熱抵抗」となっています。このように、データシートによって言葉が違っていたりしますが、言わんとすることは同じなので、細かいことは気にせず使っていきます。
接合部-外気間熱抵抗は、たいてい「θj-a」、「Rj-a」といった記号が用いられます。単位[℃/W]または[K/W](Kはケルビン)を目印に探すとラクです。
step4:許容損失を調べる
さて、step1からstep3によって、必要な値が揃いました。オームの法則によって熱Pを算出します。
よって、外気50℃でジャンクション温度を120℃まで使用する場合、許容損失は1.17Wであり、1.17W以下であればヒートシンクなしで使用しても大丈夫なことが分かりました。
その損失を電流値にすると、
であり、167mA程度まで負荷電流を取り出せるといえます。(正確には三端子レギュレータの無効電流分だけ減ります)
0 件のコメント:
コメントを投稿