分圧回路とその使い方

2021/09/21

計測

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電圧計測する際に、非常によく用いられる「分圧回路」。単純(シンプル)ですが、色々なところで活躍します。オシロスコープのプローブも、基本は分圧回路です。また、オペアンプ回路などでもたくさん出てきます。

ということで、今回は直流電圧計測を念頭に、「分圧回路」について解説していきます。

(計算フォームはコチラ → 分圧回路の分圧比、後段Zの影響、Cを付けた場合のfc

分圧回路とは?

まずは、分圧回路とはどのようなものかを見ていきます。

分圧回路は、こんなものです。

抵抗分圧

VinをR1とR2で受けて、R1とR2の中点から電圧を取り出します(Vout)。

分圧回路で、何ができるのか?

分圧回路にできることは、電圧を下げる(縮小する)ことです。

例えば、電圧を1/10にする分圧回路の場合、入力に24Vを印加すると、出力電圧は2.4Vとなります。

分圧回路ブロック図

分圧回路の使いどころ

例えば、バッテリ電圧をデータロガーでログを取りたいとします。仮に、測りたいバッテリ電圧が72V程度、データロガーの入力電圧範囲が±10Vだった場合、直接接続することはできません。

このような時が、分圧回路の出番です。

分圧回路の出番

分圧回路で1/10などにして、入力電圧範囲内に収めます。

このように、分圧回路は電圧を調整するのが目的のため、測定したい電圧が入力電圧範囲に入っている場合は不要です。

出力電圧はどう決まるか

それでは、この分圧回路の出力電圧はどう決まるのか、見ていきましょう。

分圧回路の出力電圧は、オームの法則から求められます。

分圧回路の出力電圧

VoutはR2にかかっている電圧(R2の両端電圧)なのでVout=i×R2

R1とR2に流れる電流は同じ(キルヒホッフの法則)
[関連記事:キルヒホッフの法則とは? カンタンにいうと、どういうこと?]

電流iはR1とR2を直列にした抵抗に、電圧Vinをかけたときに流れる値なのでi=Vin/(R1+R2)

iに代入してVout=Vin/(R1+R2)×R2

形を整えるとVout=R2/(R1+R2)×Vin

よって、出力電圧は入力電圧のR2/(R1+R2)倍となります。

出力電圧を入力電圧の1/10としたい場合には、

分圧比

より、R1はR2の9倍の値にすればよいことが分かります。

分圧回路では、入力電圧Vinを、R1とR2でそれぞれの抵抗の大きさに応じて受け持つことになります。入力電圧を、R1とR2によって"電圧を分ける"ということで、"分圧回路"と呼ばれているのだと思います。

電圧の分割

~考慮すること~①消費電力

上記の例で、出力電圧を入力電圧の1/10とする場合、分圧回路のR1とR2の比は1:9にすればよいことが分かりました。では、具体的にどのくらいの値とすれば良いのでしょうか?

まず考慮することとして、消費電力があります。分圧回路による消費電力は、R1、R2の抵抗でそれぞれ

分圧回路の消費電力

となります。ここで、電流iは

部夏回路に流れる電流

であるため、R1とR2の値を大きくするだけ電流が減り、消費電力が下がります。R1とR2の消費電力の値は、少なくともそれぞれの抵抗の許容電力値以下とする必要があります。消費電力を抑えるためにも、抵抗値は大きくとりたいところです。

とはいえ、抵抗値は大きければ大きいほど良い。というわけでもなく、数十kΩ~数百kΩ程度が目安です。R1とR2を合わせて500kΩを超えてくると、ちょっと高くしすぎかな...?という印象です。(もちろん用途にもよります。)

~考慮すること~②接続先の入力インピーダンス

分圧回路の抵抗値を高くすると出てくる弊害として、接続先の入力インピーダンスによる誤差の問題があります。分圧回路にメータやデータロガー、ADコンバータなどを接続したとき、等価回路は

分圧回路と接続先入力インピーダンス

となり、データロガー等の入力インピーダンスがR2と並列に接続されることになります。このとき、Voutは等価回路より、

入力インピーダンスを考慮した分圧回路の電圧

となります。(Zin:入力インピーダンス)

入力Z(Z:インピーダンス)がR2に対して"充分に"大きければ問題ありません(Voutの値に影響がほぼない)。しかし、R2に対して入力Zが充分に大きくない場合は、その分だけ Voutが小さくなります。

接続先の入力Zがあまり大きくない場合に、この誤差を減らすためには、分圧回路の抵抗値を小さくする必要があります。しかし、分圧回路の抵抗値を下げると、消費電力が増えてしまいます。そんな時、どうするかというと、オペアンプによるボルテージフォロワをかますのが常套手段です。

ボルテージフォロワによる誤差回避

ボルテージフォロワは、入力Zがとても大きいため、入力Zによる誤差が無くなります。また、出力Zも小さいため、入力Zのあまり大きくないもので受けても、そこでの誤差も小さくなります。

このように、ボルテージフォロワを用いることで、入力Zによる誤差の問題を回避することができます。しかし、オペアンプの電源を用意する必要があり、オペアンプの消費電力も考慮する必要があります。

まとめ

分圧回路のまとめ
  • 分圧回路は電圧を小さくすることができる
  • 分圧回路の倍率(入出力電圧比)はR1とR2の抵抗の比で決まる
  • 抵抗値の目安は数十kΩ~数百kΩ程度
  • 接続先の入力インピーダンスが小さいときは、ボルテージフォロワを用いる
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