電線には「許容電流」というものがあります。電線に流す電流は、この許容電流の値以下にする必要があります。ところで、この許容電流は何で決まってくるでしょうか?答えは「被覆」です。今回は、前半は、電線の「許容電流と被覆」、後半はソーラーカー・エコノムーブの電線の考え方というテーマでやっていきます。
許容電流とは?
ざっくりというと、許容電流とは、(とある条件において)安全に流し続けることができる電流の最大値 のことです。
この「とある条件において」がくせ者で、本当の許容電流値は条件によって大きく変わります。
許容電流を超えると...?
許容電流以上の電流を流し続けた場合、どうなるでしょうか?
電線に電流を流すと、電線の持つ抵抗によって発熱します(ジュール熱)。この発熱が大きくなって、銅が溶けて断線する。と勘違いされがちですが、銅の融点は1085℃です。というわけで、先に被覆が溶けて絶縁が保てなくなります。(絶縁が保てなくなった結果、電線がショートして、その短絡電流によって銅が溶けることはあります!キケン!)
ジュール熱によって被覆の絶縁が保てなくなるため、それ以上電流を流せない。ということで許容電流が決まるので、逆にいうと被覆が熱に耐えることができればもっと電流を流してもOK、となります。実際、被覆の耐熱温度が高いと(同じ太さでも)許容電流が大きくなります。ということで、どれだけ電流を流せるか(許容電流)は被覆の耐熱性能しだいです。(補足:それ以外の要因もあるようですが、最大要因は被覆の耐熱性能)
ソーラーカー・エコノムーブでの考え方
ソーラーカー・エコノムーブ車両に適用することを考えた時には、許容電流で電線を選ぶのはあまり好ましくありません。電線がジュール熱で発熱するということは、それだけ損失が発生しているということです。
ソーラーカー・エコノムーブは省エネルギー性能を競うレースですので、なるべく損失は減らす必要があります。「被覆が発熱に耐えられるか」ではなく、「いかに発熱させないか」が大事です。
損失を減らすためには、電流値を下げるか、抵抗値を下げる必要があります。
電流値を下げる
まず、電流値を下げることについて考えます。電圧を上げれば、同じ電力でも電流は下がります。
そして電流が下がれば、損失はその2乗で下がります。
配線での損失を考えると電圧は高い方が良いのですが、ソーラーカー・エコノムーブの場合、電圧を高くするとバッテリの直列数を増やすことになります。あまりバッテリの直列数を増やすと、バッテリごとの容量差の問題が出てきます。また、モータとの兼ね合いもあり、電圧を高くすれば高くするほど良い、というわけでもありません。いいあんばいを探すことが重要です。
ソーラーカーの場合、巡航時の電流が10A程度(になるようなバッテリ電圧)と設定されることが多いかな、と思います。
抵抗値を下げる
次に、抵抗値を下げることを考えます。抵抗値を下げるには、太さ(sq)を上げることがまず思い浮かびます。配線を太くすると電気的ロスは下がりますが、車両の重量増になります。そのため、これもやりすぎ注意!です。
ソーラーカー・エコノムーブの場合、ざっくり1Aあたり1sqくらいが目安です。このあんばいも車両によって変わりますので、絶対的なものではありません。(なお、あくまでソーラーカー・エコノムーブといった特殊用途における目安で、普通はもっと損失を許容して細い電線を使います。)
それよりも重要なことは、「配線を短くする」ことです。配線の長さを半分にできれば、抵抗値も半分になります。また、配線の重さも半分になります。
温度も忘れずに
ソーラーカーの大会は真夏に行われます。気温35℃、炎天下で車内温度40℃超え!なんてことも十分あり得ます。オーストラリアのWSC(World Solar Challenge)にいたっては気温40℃、車内50℃!?くらいになりそうです。
一般的なKIV電線は耐熱60℃です。温度のマージンが少ないため、ソーラーカーの車内配線としてはオススメしません(特に電力配線【バッテリ⇔モータ間など】)。もう少し耐熱に余裕のある電線を選択しましょう。
まとめ
以上の内容をまとめます。
●電線の許容電流は被覆の耐熱で決まる
●ソーラーカー・エコノムーブでは、許容電流で電線を選ばないこと!
●ソーラーカーの場合、バッテリ電圧は、巡航時の電流が10A程度となるような値とする
●配線は短く!
●ソーラーカー・エコノムーブでは、電線の太さは1Aあたり1sqくらいが目安
●車内が高温になるので、電線の耐熱に注意!
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